謹訳平家物語読み終わり記念ブログ

妹の金であん肝を食いました

「カスミちゃん」

私の名前は「カスミ」である。

大学生くらいまで、どこかこの名前に馴染めなかった。

どこか名前を呼ばれても私が私であって私でないような気がしていた。

 

友達に「カスミちゃん」がいたからである。

 

カスミちゃんに何の罪も、何の恨みもないのだ。むしろ、いつもニコニコしていてとても可愛くて誰にも好かれている、そんな子だった。

私もそのカスミちゃんが好きだった。

 

だからだろう。

 

中学時代までみんな「カスミちゃん」といえば私ではなくその子だった。先生でさえもその子を「カスミちゃん」と呼んだ。私は「カスミちゃん」ではなかった。両親に名前を呼ばれてもどこか他人事のような気がしていた。

 

名前の漢字が少し難しかった。

転校生で、カスミちゃんよりも馴染みがなかった。

大人しく人見知りで、下の名前を呼ぶような雰囲気の子ではなかった。

 

今になって、冷静に考えたらそんな理由も浮かぶようになった。でも、カスミちゃんを見ていると、私が劣っている気がしていた。人に優劣なんてない、今となってはそう思うのに。

 

 

高校生になってカスミちゃんと離れ離れになったとき、新しくできた友達は私を下の名前で呼ぶようになった。

違和感があってくすぐったくて…でも嬉しかった。

 

今でも、下の名前で呼ばれると少しだけドキッとしてしまう。

その少し苦い思い出が尾をひいているのだな、と思う。単純に、大人になって苗字で呼ばれる機会が増えたのもあるが。

 

でも、その時代が無ければ今の私はないのだ。

あまり明るい子ではなかったけれど、私は私でいいところがあったし、一生懸命生きていたなあと思う。

 

 

私を「カスミ」と呼んでくれる周りの人達のおかげで私は「カスミ」になった。本当にありがたい。ありがとう。この名前が好きではなかった。でも、今は大好きだ。ありがとう。会って抱きしめられたらいいのに。抱きしめてもいいですか?